
お客様のためになっていない慣習はそのうち廃れる
「うちの業界は特殊だから」
これまで耳にタコができるほど聞いてきました。
考えてみれば業界ごとの常識があって当たり前。
このセリフはある種の言い訳的な内容を含んでいます。
「うちの業界は特殊だから(勘弁してね)」
というところが本音じゃないでしょうか。
実際にお金を出す側からしたら、業界の常識や慣習なんて知ったこっちゃないですよね。
顧客不在の悪しき慣習はよろしくない
以前、こんなことをご相談者から伺いました。
とある手続きを、税理士を窓口としてお願いしていたそうです。
※この手続きは税理士業務ではありません
しかし、時間が経ってもまったく音沙汰なし。
窓口の税理士に確認しても「大丈夫、大丈夫。ちゃんとやってるみたいだから。」との一点張り。
心配になったご相談者は、直接その手続きをされてる専門家に挨拶を兼ねて連絡したいと申し出ると…。
「いやいや、それは大丈夫です。私が窓口でちゃんとやりますから。」
ということで連絡先を教えていただけなかったそうです。
その結果…
手続きを間接的に依頼していた専門家が二年以上も放置していたことが発覚。
怒って委任契約を取り消したそうです。もちろん窓口は税理士。
私のところにいらしたときにはかなりの専門家不信に陥っていました。
実はこのような事例、よくある話なのです。
現在は少なくなったと思いますが、以前は窓口となっている先生以外には直接連絡して(させて)はいけないような暗黙の了解、いわば慣習がありました。
私も前職で経験しています。
特別な決まりがあるわけではないのですが、窓口となっている先生の立場のためなのでしょう。
数年前、司法書士の依頼人に対する本人確認義務が強化されました。
前職時代、ボスがいつもお世話になっている税理士に「これからは本人確認のため社長さんに直接連絡させてください」とお願いしたら、「なんでそんなことをやる必要があるのか! 私が間に入ってるから問題ないだろう! 直接連絡されたら困るよ!」と怒られていたのを今でも鮮明に覚えています。
実際にお金を支払う会社が、実際に手続きをする専門家とコンタクトを取るのを断る。
まったく意味不明です。
「業界の常識は、世間の非常識」
とはよく言いますが、すでに「業界の常識」ではなくなっていますのでご安心ください。
お客様のためになっていない慣習は廃れる
誰もが「おかしい」と思ってる慣習はそのうち廃れます。
廃れない場合は業界全体がそのうち廃れます。
私が在籍している司法書士業界にも様々な慣習があります。
いい慣習もあれば、もちろん悪い慣習もあります。(私の主観です。)
「郷に入っては郷に従え」
この業界で生きていくためにはある程度のガマンも必要です。
しかし、先述したような「お客様のためになっていない慣習」にまで迎合する必要はないと思っています。
ときに決断を迫られるときがあります。
そのときは「誰のためになるか」を考えて決断。
ここで選択を誤ると一生後悔することになります。
古い慣習も「歴史」「伝統」「文化」と言ってしまえば聞こえもいいですが、最後は「誰のためになるか」を考えて仕事していきたいですね。
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